
中嶋
印刷会社が今後勝ち残っていくためにデジタルワークフロー(DWF)が重要な一つのフローだと思っていますが、営業の現場から見ると、お金をいただける工程がまた一つ減るのではないかという若い人たちの声があります。それともう一方で、印刷会社もプロモーションに積極的に取り組んでいかなければならないということで、川上へ川上へという声もあります。私たちのような中堅印刷会社は2極化の中で、どちらに進めばいいのかと。
赤羽
日本の大手と言われる印刷会社も、商社として機能しているだけですから、自分の所ですべて刷っているわけではないですから、機能というのはこの先コンピュータで済んでしまうんですね。印刷システムを作ってしまえば、彼らがお金を取っていた仕事は価値がなくなりますよね。そういう意味では会社の規模に関係なく、大きなところと対等にやっていける時代がくるのかなと思っています。逆に大きいところの方が苦しくなる気がしますね。余計なところを抱えていますから。
データを作る工程と印刷工程が分かれれば、純粋に入札行為が行われますから、企業は入札システムを利用して、品質やコストが見合う印刷会社を10社20社とエントリーしておけば、それで後はデータを渡すだけで流れていきますので、決してそこには会社の規模は関係ない。そういう意味ではどんどん大きな会社とも取引していけばいいのではないかなという気がします。
単純に間を取り持つだけの人はいらないです。だから印刷会社の営業はきちっとしたスキルを身につけないと、呼んでもらえなくなる。
中嶋
ソリューション型営業の中でDWFを駆使して今後進んでいくとして、小ロットとか、ワントゥワンに適したバリアブル性というものはどうお考えですか?
赤羽 印刷物はオンデマンド性やバリアブル性を持つべきですよね。ウェブもデジタルで作った情報を最後は液晶ディスプレイに出すだけですから、液晶ディスプレイがなければ何の機能もしないわけです。それと同じように紙もデジタルのコンテンツを最後紙に載せるだけなので、最後はオンデマンド性とバリアブル性だと思います。技術的にはたぶんそういう事はいくらでも出来るはずです。例えば駅で新聞を買うという行為を行う際に、今は誰も同じ新聞を買うわけですけど、もしかすると駅にプリンターが置かれていて、100円入れれば自分の必要とする情報が効率よく載っている新聞を買えるようになるのかもしれないですね。パソコンを持つよりはその方が楽なような気がします。
高橋
たとえばコンテンツの一覧のようなものがあって、自分の好きなコンテンツをチョイスすればそれだけが集合したような新聞が出てくるという感じでしょうか?
赤羽
そうです。たとえばICカードを持っていて、そこに自分のIDか何かが入っていて、駅でピッとすれば、僕はプロ野球に興味ないのでプロ野球が載ってない、でもモータースポーツが好きだからモータースポーツは深く入っているというようなものがチョイスできるようになるんじゃないかなと思っています。
後は出力物のスピードとかコストとか運用の話とかという課題がありますけど、そういう事はそんなに技術的に難しい話ではないので、そういった事によってウェブやTVと闘っていけるかなと思います。
中嶋
繋がるかどうかわかりませんが、そういう意味では異業種からの印刷業界への参入というのはあるのでしょうか?たとえばファイル転送サービスをやっているような会社が、自分の営業所に印刷機に代わるようなデジタル印刷機などを置いて刷り出して自分のところのエリアに配布するような、そういうものが今後出てくのでしょうか?
赤羽
出てくるかと言われると日本の場合は未知数ですけど、十分出てきてもおかしくない環境ではありますね。欧米ではデジタル印刷機で新聞を刷っているケースもあるみたいで、今年のDRUPAには新聞協会の人たちも大勢いたらしいですけど、新聞の専売商法をファイル転送サービスが買収して、そこにデジタル機を置けば出来てしまうという意味では、ありえる事だと思います。
受け取る方もその方がありがたいと思いますよ。不在票があちこちから入っていて、そこにいちいち連絡しなければならないよりは、家に物を運ぶ人はここ一本だけという方が便利だと思います。テレビも電話もインターネットも光ファイバー一本で済むのと同じように、物流も一本となった方が当然受け手にとってはありがたいですから、50年ぐらい後にはありえるのではないでしょうか。
中嶋
従来の印刷受注スタイルとDWFの印刷受注スタイルと、もう一方で印刷通販といいますか、ネットでの印刷受発注システムで、私どももプリントプリウスという印刷通販会社をやっているんですが、印刷通販とDWFの関係は一致していくものでしょうか?
赤羽
一致してくると思いますね。私も(印刷通販を)使っていますけど。大企業であれば当然発注量がかなりの量になりますから、ネットでの発注はしないと思いますが、小規模の事業所とか小ロットの印刷物では非常にメリットがあると思います。めちゃくちゃ安いと思いますし、制作者やデザイナーがスキルを身につければ自分の利益を増やせる手法かなと思います。
中嶋
印刷通販システムの市場はまだまだ拡大しますか?
赤羽
拡大すると思いますよ。町の印刷物という言い方を僕はするんですけど、大企業ではない中小企業が地元のデザイン会社や印刷会社に発注する印刷物はみんな印刷通販になっていくのではないかなという気がしますね。
中嶋
私どもがさせていただいているDWFはある意味では専門的というかプロ的な手法ですが、印刷通販システムというのは一般の方にとっても便利な印刷物のシステムだと思うのですが、これはどちらが増えていくのでしょうか?DWFを一般の方も使うのか、プロの方がもっと使われるのか、我々はクライアントを対象にした印刷物をしていますが、今後はどちらがより進化していくと思われますか?。
赤羽
両方ではないでしょうか。
グーグルはオフィス系のツールを置いていますけど、同じようにグラフィック系のツールを置いて、そこからPDF-Xを書き出す仕組みを作るのではないかと思いますし、そうすると一般の方が簡単に印刷物を作るのではと思います。
高橋
商品のカタログみたいに実物があって、その色とドンピシャにしないとダメな印刷物もありますよね。今のところDWFというのはそこまで色の要求が求められるものに関してはしんどいのかなと。
今後DWFが進化する方向というのは、そういう色の問題をクリアしていく方向に行くのでしょうか?
赤羽
現段階で僕は、きちっとルールを決めておけば色は一致すると思っています。
色が一致しないのはやり方が悪いということになると思っています。それはベタ濃度の管理まで自動で行う印刷機で刷れば一致するのか、あるいはデジタルプルーフを印刷機の手元において見ながら刷れば合うのか、その手法自体は何とも言えないですけど、基準色を定めてルール通り作っていれば刷れるはずです。
実際ここまで一致するのかと思うほどの本機の刷りものも見ていますので、大企業のお金をかけた仕事でも大丈夫だと思っています。
高橋
自分の今までの経験でいうと、印刷側、プロダクト側はちゃんと一定の基準が定められて基準どおりに刷りましたが、色の品質でクレームがついたケースがありました。では何が悪かったのかというと、商品を撮影したそのものの画像が商品の色からはずれていたんですね。ただ、カメラマンのところで出力したプリンターで見ると合って見える。だけど本当のデータは商品の色とは違っていた。そういう笑い話のようなことがまだありますね。
だからお客さんが求めるクオリティは、最後の印刷のところで求められているわけですけど、私どもからしたら撮影の時のクオリティにも目を向けて欲しいと思うときがありますね。
赤羽
だから全行程のすべての人がルールを守らなければいけないのです。
高橋
DWFというのはそういうことですよね。
前から後ろまで決められたルールをきちんと守ると。そうすることで品質も納期もその他のことも守られていく、ということですね。
中嶋
私どもはこれからもちろん法人営業を中心に活動していきますが、DWFを一緒にやっていこう、コラボを組んでいこうとして意識している相手が制作会社やデザイナーの方なのですが、この方たちへのDWFの啓蒙や、普及をどうしていけばよいのでしょうか?
赤羽
まあ、内部に関して言えば、自社としてスキルアップをするような教育が必要となってきますが、外部はある意味難しいと思います。デザイナーの中でも不勉強な方もおられますからね。勉強もしない人は生産性という話も理解できないですし、理解しようともしないですし、そういう人たちは放っておけばいいんじゃないかなと思いますね。それよりは教えるのでしたら自分の所の社員に教えた方が、自社の利益になるのではないかなという気がしますよね。外の人間に教えてあげても、あまりメリットにならないのではないかなと思いますけど。
中嶋
高級印刷や美術印刷というのもありますが、DWFで行われる印刷物が印刷全体の中でどれくらいのウエイトを占めてくるのかなと。
私どもはこの割合が大きければ大きいほどDWFに取り組んでいかなければいけませんし、実際今も取り組んでいますけどね。
赤羽
それは大半はそうなるのではないですか。美術印刷とかはできる会社がすれば良いし、それこそ撮影段階からの話になりますから、別扱いで考えるべきだと思います。一般の商品では当然DWFが使われると思っています。
高橋
赤羽さんの本を読ませていただいて、感じたのが、我々印刷会社として今後DWFが広がっていって、それがスタンダードになっていったときに、我々が考えておかなければならないのが、データを作る側になっていなければ生き残っていけないということです。
ただ単に受けて印刷するだけの会社というのはどこでもできる訳です。それよりもっと肝心なのは、その完全データを作れるデジタル化が進んだ会社というのが、さらにレベルの高い会社になると思っていましたので、これを作れるようなデジタル化の推進、体制・仕組みを今後作っていかねば生き残っていけないと思っています。
中嶋
若い人たちのためにも印刷業界の未来というか将来のことをお聞きしたいのですが、先ほど、現在、印刷産業は年間7兆を切るくらいで、印刷会社は減少するだろうと厳しいお話がありましたが、私どものような会社が生き残って、勝ち組になっていく為のご提言はありますか?
赤羽
基本はさっき言ったスピード・コスト・クオリティをあらゆる部分で活かす仕事をされるということですよね。コミュニケーションの話になるともう一歩上の上位概念になってしまうと思うので、生き残りの話とは違うだろうと思いますが、先ほど言ったスピード・コスト・クオリティ、つまり標準化ですけど、標準化を達成しておけばどこの仕事でもすぐに受けられますから、それがカギなのかなと思います。
企業の側も今はみなさん、どうしたら合理的に無駄をなくせるかということを考えていますが、やはり結果的には標準化という事になってくると思いますから、完全データを作れるということと、その時に応じて印刷をするということが可能で、その受け口になり得ればそれが生き残り策だろうという気がします。
本日はありがとうございました。
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