土山印刷は100年に渡り、DMやカタログ、チラシを使ったマーケティングを行ってきました。
そのようなカタログ向けのマーケティング手法に、現代のマーケティングロジックを組み合わせたものを、ちょうど忍術になぞらえて「土山効果流」と読んでいます。
以前効果流については別記事にて紹介をし、反響をいただきました。
そこで、より具体的なマーケティングについてまとめた記事を「新・効果流」として再び連載いたします。
前回よりマニアックな、カタログを担当する方に向けた実践的なマーケティング手法は、カタログに限らず、広告・宣伝を考えるときにも応用できます。
少し難しい内容になりますが、ぜひともじっくりと読んでみてください!
- 1の段:情報の5要素
- 2の段:コミュニケーションのスタイル
- 3の段:コンサルテーション型セールス
- 4の段:リスクベースシンキング
- 5の段:コンバージョンレート
- 6の段:PI値
前言:キーストーンプログラム
これを読んでいるあなたは、製品カタログ開発の担当の方ですか?
生産性の高いカタログ制作に必要なことは、その仕様を決定することではないことを、あなたはすでに十分に理解されているのですね。
洗練されたスタイルのいいカタログではなかなか成果が出ないことに、すでにお気づきでしょう。
カタログはデザインが洗練されているかどうかより、見やすい、解りやすい、買いやすい(問い合わせが簡単)ことが大事なのです。
カタログ制作で重要なことは紙質やページ数、形状ではありません。
製品カタログや関連の販促ツールは、定期的な改定が必要になります。
その際、かっこいいものを作るなどの「とんちんかんな考え」は捨てましょう。
そんなことより重要なことを確認する必要があります。
カタログ作りの重要課題=メインクレームはビジネスに成功することです。
そのための編集技法がサブクレーム=具体的手法です。
大事なことは状況の把握と分析、対応施策のPDCAを廻すことです。
このPDCAを「キーストーンプログラム」と呼びます。
ところでこのキーストーンという言葉をご存じでしょうか?
日本語では要石です。要石と言っても、建築は関係ありません。
ここで紹介するキーストーン=要石は囲碁の黒碁石のことです。囲碁では先手側が必ず黒碁石を打つことになるため、先んじて有利な位置に手を打つことができます。
このように、相手が石を置く前に、自分に有利な位置に「先手を打つ」ことが、キーストーンプログラムの原理になります。
つまり、カタログ開発にはその目的やボリュームに応じた最適施策があり、その役目ごとにカタログの形状を変えることで効果的な販売ツールになるのです。
このカタログを選別した顧客に送ることがダイレクトメール展開です。
カタログとはその編集内容であり、ダイレクトメールはその運用手法なのです。
では、「先手を打つ」とはどのようなことなのでしょう。
それは、顧客の要望に対して提案の先手を打つことです。
その製品・サービスの現状を把握し、状況の分析・評価を行って改善策を考案し、提案を行います。さらに実施した改善策を検証しさらに進化させた施策へと発展させ、ビジネスを成功させる活動です。この活動で依頼者の方との関係が醸成され、あなたの提案を受け入れてもらう環境ができます。
それでは、このキーストーン活動を紹介していきましょう。
1:情報の5要素
効果的なカタログを編集するには、また、販促提案を行うためには、以下の5項目の情報を把握することが必要です。
(1) 製品・サービスについての知識
当然、製品・サービスの特長、セールスシェア、競合製品、プライシングマネジメントなどの情報が必要です。
当然その商品・サービスのカタログ制作を担当する方はそのマーケットに何らかの関与した実績が必要です。これがないと依頼する方の信頼が獲得できません。
カタログ制作を依頼するクライアントや部署以上に市場の評価を把握しておく必要があります。したがって、とつぜん営業や制作担当になっても、その商品を知らなければカタログ制作の依頼を取り付けることはできませんので、事前に数年の調査が必要になります。
また、あなたがカタログ制作や企画を依頼する側の方であればこの、同カテゴリーの商品や市場について制作担当者がどのくらいの知識を持っているかが審査の項目になります。
(2) 販売チャネルの把握
商品・サービスのことが理解できても、どのようにして販売しているかも重要な情報です。
これがわからないとカタログの企画演出ができません。
とくにそのカタログが、直接販売を行うような通販カタログであれば注文方法が重要な要素ですし、店頭販売であれば対面の際のセリングシートのような簡潔な編集になっている必要があります。
カタログあるいはDMはこの販売チャネルの販売活動と連携していなければなりません。
販売担当の方の意見吸収もカタログ制作には必要になります。
(3) 年間コミュニケーションプラン
カタログやDMの開発は都度、突然作るものではないので年間を通じたコミュニケーションをどのように展開しているかの把握が必要です。
たとえば、冬のイベントは夏に企画準備をしますし、夏の準備はその前の冬に行います。
したがってシーンの撮影など制作作業は1年前から取組がスタートすることになる場合もあるわけです。
年間のコミュニケーションプランがどのようにリレーしているのかを知ることが効果的なカタログ・DM開発の重要な情報です。
(4) コミュニケーションツール
年間のコミュニケーション活動のイベントごとにツールが開発・準備されます。
この各ツールにどのようなものがあるのか、全体を知ることが必要です。
ツールは単独で機能させてしまうと大きな効果が出ません。カタログ・DM以外の
ツールがどのように連携して機能しているかの把握も大事な要素になります。
(5) 販売戦略
商品知識、販売チャネル、コミュニケーションプラン、そのツールと
説明してきました。それら4項はこの販売戦略に則して整備されています。
そうなっていなければ効果が最大化できないことになります。
カタログ・DMの制作は「販売戦略を具体化したもの」になります。
ここまで読んで、大抵の方はこう思うでしょう。
「それができたら苦労しない!」と。
はい、その通り。正直なことを申しますと、これができていればマーケティングなんて難しくないのは当然です。
だからこそ、新・効果流ではこの5項目を把握できていなくても大丈夫な方法をお教えいたします。
それは……
と、続けたいところですが、今回のお時間のようです。
本日はここで、読みおわりとなります。つづきはまたの機会にお運び願います。
マーケティング講談:新・効果流忍法帖
作:AsianX-issychan 智楊君(トモヤンクン)でした。
石山智男 略歴
1954年福岡市天神(中央区今泉)生まれ。1977年からプロダクションデザイナー、アートディレクターとして、広告制作、レタリングデザイン、パッケージデザイン開発等を担当。1992年からコカ・コーラ社マーケティングプログラムのガイド制作や実施活動支援を担当。「生産性の高い売り場づくり」実現のためのスペースマネジメントをカタログや店頭演出に応用した理論を構築。またクリエイティブワークをスピーディに行うための企業セミナーを開催。ブランディング領域でもイオンプライベートブランド「トップバリュー」のパッケージデザイン開発など多数。2012年から2022年まで、土山印刷にてマーケティングミックス・デザインワークのコーチングを担当。シニアホビーコンサルとして書道、楽器演奏、スポーツの楽しみ方の紹介活動を行っている。