当社では『印刷のプロ』として、ハード面の品質(RGB6印刷や、カタログ診断、カラーマネジメントシステム等)だけでなく、ソフト面(マーケティング理論に基づく紙面デザインやDMのBPOサービス)でもお客様のお役に立てるよう、日々努力を続け、実績を上げております。今回はその中から当社エグゼクティブデザイナー石山執筆による『マーケティングコラム(多店舗展開編)』を全3回に渡って紹介させていただきます。店頭プロモーション・企画ご担当の方、お客様の購買意欲アップにご興味のある方の参考になれば幸いです。
販売チャンスUP!オムニチャネル化に対応する売り場づくり
現在、商品販売はwebsite販売と実店舗販売の連携で、消費者の購買行動がオムニチャネル化しています。
したがって、このオムニチャネルによるプロモーション企画で集客・販売が大きく促進します。
多店舗型スポーツショップの例で消費者の購買行動をたどってみましょう。
スポーツ競技の報道で商品購入欲求が生まれる
中学生の棋士29連勝で将棋人気が沸きました。
オリンピックの卓球競技でもそうです。
スポーツ競技の中継やリザルト報道で購買欲求が生まれます。
コマーシャルとは違って演出やムードではなく、リアルな情報が消費者の購買行動を誘致するのに一番説得力があります。
この例では、まずバドミントン世界選手権優勝の報道がきっかけとなり、用具の購買欲求が生まれます。
Websiteでバドミントン競技や用具の情報を検索します。
ここで消費者はタイムリーなキャンペーンを認知します。
つぎに近くのショップを検索し、実店舗へ訪れることになります。
タイムリーなDM(ダイレクトメール)で購入欲求を喚起
Websiteと同様に会員登録などのメンバーシッププログラムによるDM投下でキャンペーンを告知、集客誘致活動も行われています。
DM開封後の行動予測としてwebsiteで詳細確認が行われ、実店舗への来店になります。
来店してからの購買行動はどのようになるのでしょうか。
ここで重要なこととして、websiteやDMで展開した告知活動と連携した演出が店頭でも施されていることです。
キービジュアルやキャッチフレーズなどのPOPでプロモーションを演出します。
まず、店舗入り口では、キャンペーン実施の告知が必要です。
また、商品展示コーナーを解りやすくするための誘導表示や、ビッグアイキャッチャーなどで客導線をコントロールします。
最短でコーナヘ到着できるのではなく、店舗全体の販売計画に応じて客導線を設計する必要があります。
つまり、キャンペーンは店頭全体の売り上げに貢献できるように企画される必要があります。
オムニチャネル手法で購買が促進
商品購入の意思決定後はそのまま実店舗で購入するケースとその場からスマホでインターネット経由発注をするケースが想定されます。
欲しいモノはその場で持ち帰りたいのですが、荷物として手持ちできなかったり、つぎに立ち寄りの予定があったりする場合、やはり配送してもらうほうが購入者は助かります。
したがって購入は「実店舗とインターネット」、受け取りは「その場と自宅」が選べる対応を整えることで販売チャンスが拡がります。
クーポン券の配布もDMで受け取るのとwebsiteで取得できる仕組みが必要です。
最終的には来店を促進することが大事です。
目的の商品だけでなく関連商品やほかの商品、とくに衝動買いさせたい商品の販売につながります。
店頭演出としてはクロスマーチャンダイジングの施策としてスポーツドリンクとの展示なども有効です。
またこのことは来店客への「おもてなし」になります。
モチベーションが大きくUP!店長の意見を反映したプロモーション企画
多店舗型事業を展開している企業では、店舗活動を支援する本部が必ずあります。
年間のプロモーション、イベント企画、そして店頭演出ツールの調達などいろいろな業務を担当していることと思います。
さて、この本部が企画したプロモーションや販促ツールが十分に生かされているのかと言えば、そうではありません。
それはなぜでしょうか。
多店舗型事業の店舗の形態は10坪以内の都心独立店であったり郊外の広い店舗であったり、ショッピングセンターや商店街の中の店舗であったり、まちまちです。
そこへ均一なキャンペーン企画やPOP資材を用意しても、運用できない場合が多くなります。
したがって、まず基本企画は本部で準備しますが、各店舗責任者との打ち合わせで、カスタマイズする必要があります。
ここで重要なポイントは「各店ごとに企画、POPの準備をするのではない。」ということです。
カスタマイズはまず販売方針に則った基準企画案が必要です。そのことで全体のキャンペーンコンセプトが明確になります。
そのうえで、各店舗ごとのタイプ別カスタマイズを行います。
当然、各店舗に最適なプランです。また他店での成功施策をタイプの違う店舗でもテストすることで、店頭活動を進化させることができます。
効果的な店頭プロモーションの企画にはサイトパトロールが重要
本部主導型のキャンペーン実施は販売現場担当の方との意思乖離がおきます。
企画担当者は充分な現場状況の把握と分析が必要です。
この販売の現場を見て状況を把握することがサイトパトロールです。
この状況分析によって有効なプロモーションが企画立案されます。
そして、このできあがったプロモーションの内容を各店長や担当責任者に説明を行い、意見を聞き、その内容を反映させて、企画が完成します。
各店長が主体となって企画を作り上げることでモチベーションが高くなり、プロモーションの実施成果を高いものにすることができます。
プロモーションの成功には演出資材のタイムリーな調達体制が必要
とくに長期のプロモーションを実施するには演出資材やPOPなどのスムースな調達が必要です。
しかも、あらかじめ準備をしておくのではなく、状況に応じてリメイクしたものが必要になります。
これは、気候状況や売れ行き、競合店、または競合商品との関係で戦略変更が必要になる場合があるからです。
また、演出資材を定期的に変更することで販売が活性化される効果もあります。
そのリメイクも丁寧なサイトパトロールと店長との意見交換で精度の高いものになります。
店舗の支援本部はそのように、販売手法の調整やタイムリーな資材調達環境を各店舗に提供する必要があります。
進化する売り場!効果測定と改善活動
多店舗展開で、生産性の高い売り場へ進化させるにはプロモーション実施の効果測定と店頭演出資材の改良が必要です。
改善のためのPDCAをどのように回せばよいのでしょうか。売り場改善活動のPDCAを説明します。
C(チェック)からスタートさせる準備のPDCA
PDCAはPからスタートだけではありません。Cからのスタートを紹介します。
通常プロモーションを企画する場合いきなり企画を立てるのではなく、今までの実績や今の状況を十分把握する必要があります。
つまりチェックからのCスタートになります。
現状を把握した後、Aの企画の作成になり、実施へと進行します。
これが準備段階のPDCAです。プロモーションがスタートしたのちは従来のPDCA循環活動になります。
生産性の高い売り場づくりPDCA=キーストーン活動
これまでに説明しましたように生産性の高い売り場づくりには、PDCA活動が必要です。
このことをキーストーン活動と呼んでいます。
キーストーンとは日本語では「要石」です。
これは囲碁の「黒碁石」で、先手定石をうつことです。
状況の把握としてのサイトパトロールはプロモーション企画において重要な作業です。
この作業はなぜ行うか、それは今後の状況を予測するためです。
より速く予測を行い施策を準備し実行していく。これを先手、先手で進めることで売り場の生産性が大きく向上します。
この先手黒碁石=キーストーン活動をいろいろな業務に活用してみてください。
土山印刷では「生産性の高いツールづくり」をテーマに、カタログやDM制作担当部署向けにセミナーを実施し、手法改善活動をお手伝いしています。
お気軽に、お問合せ、ご相談ください。マーケティングミックス・クリエイティブワークについての専門的な解説をいたします。
石山智男 略歴
1954年福岡市天神(中央区今泉)生まれ。1977年からプロダクションデザイナー、アートディレクターとして、広告制作、レタリングデザイン、パッケージデザイン開発等を担当。1992年からコカ・コーラ社マーケティングプログラムのガイド制作や実施活動支援を担当。「生産性の高い売り場づくり」実現のためのスペースマネジメントをカタログや店頭演出に応用した理論を構築。またクリエイティブワークをスピーディに行うための企業セミナーを開催。ブランディング領域でもイオンプライベートブランド「トップバリュー」のパッケージデザイン開発など多数。2012年から2022年まで、土山印刷にてマーケティングミックス・デザインワークのコーチングを担当。シニアホビーコンサルとして書道、楽器演奏、スポーツの楽しみ方の紹介活動を行っている。