公開日: 2018年8月6日 - 最終更新日:2020年6月24日

企業における多店舗化、多店舗経営の重要性と課題とは? ~大切なのは“足し算”“引き算”のバランス感覚?!~

土山印刷 公式
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土山印刷では印刷を中心に、さまざまな方法でお客様の情報伝達のお手伝いをしております。今回はそんな中、当社が今後お客様のお手伝いのひとつとして展開しようと考えている「多店舗店頭支援」について、弊社のコンサルティングブレーンである株式会社A-pro代表の嵐様にお話を伺い、その内容を抜粋してコラムとして掲載させていただきます。

岩崎:
本日はよろしくお願いいたします。さっそくですが「多店舗化、多店舗経営」についていろいろとお話を伺いたいと思います。まず、そもそも「多店舗化・多店舗経営」とはどういったものでしょうか?またそのメリットとは何でしょうか?

A-pro嵐様(以下嵐):
多店舗経営には、経営とマーケティングの2つの思考があります。まず経営思考でいうと、(バブル前やリーマンショック以前は)人材育成確保・売上利益の向上のための手段です。店舗には売上の上限、利益の上限があります。仮に店舗がひとつしかない場合、そこに優秀な人材が育ってきても、売上や利益に上限があるため、与えられるポストが頭打ちになるのです。そういった場合に多店舗化は有効で、優秀な人材に対して適切なポスト、報酬が与えられるのです。そして優秀な人材によって、増やした店舗の売上、利益が組織にもたらされます。ただし、これは3店舗や5店舗程度の多店舗化に限ります。50店舗を超えるような多店舗化には別のロジックがあるのですが、基本的には事業を右肩上がりに成長させたい場合に、多店舗化という手段が基本となります。

一方で、マーケティング思考は方向軸が全く異なります。重要視されるのが、その地域の人にとって喜ばれる存在価値(商品)の提供なのです。『地域にその店、商品、サービスがあって良かった』と思われる存在になること、必要と思われている地域に商品を提供していくこと、それを続けていった結果、多店舗になっていく、という考え方なのです。  これが、経営とマーケティングのそれぞれの目線から見た「多店舗化・多店舗経営」です。多店舗の「多」とは、同じ商品・パッケージ・サービスの供与、それによるシステムの標準化なのではなく、ベースのブランド信頼を保ちながら、結果的に多になる、ということなのです。それを継続していくためには、エリアマーケティング(地域特性)を生かし、個店(環境共有店)の力を高めていく、といったマーケティング的思考が今の時代の多店舗経営に必要です。

岩崎:
なるほど、規模による利と安心信頼の獲得、事業の拡大と人材育成(雇用創出)、これが多店舗化の主なメリットなんですね。

嵐:
そうですね。また、M&Aという視点からも経営の中での「財務」を中心に考察してみましょう。「財務」というのは原則的に”足し算”と”引き算”です。足し算は売上、引き算は仕入れ原価や人件費、家賃や光熱費などです。その中で人件費比率というのは業種業態などによって異なります。例えばサービス業などは人件費比率が高くなります。例えばそういった会社がM&Aを考えた場合に、1年先、3年先、事業をリリースする5年先を見据えて”足し算””引き算”を計画します。”足し算”である売上を高める計画はもちろんですが、これまでは”引き算”の部分で合理化の名のもとに人件費を下げることが多くありました。ただ現在では少し傾向が変わり、売上の正当性を確認することはもちろん、「原価の正当性」「商品の市場価値」を確認することが増えてきました。「原価の正当性」という部分については、家賃の交渉やインフラ(情報・設備など)の整備など様々な方法がありますが、一番大事なのは安易なリストラなどで「人をいじめない」ということです。「商品の市場価値」という部分については徹底したエリアマーケティングにほかなりません。

岩崎:
なるほど、多店舗には「人」と「価値」という部分を大切にすることが必要だということですね。それでは多店舗化に必要な材料、スキルは何でしょうか?

嵐:
フランチャイズチェーン(以下FC)展開であればブランドの商品化(わかりやすい名前・商品・価格・使い道を提供する)、直営展開であれば「商い(わかりやすい名前・商品・価格・使い道を考えていく)」が必要です。経営に必要なスキルはブランド創造&経営観(商品・スタッフ・販促・店舗維持・在庫管理・売上経費管理と顧客満足&従業員満足)をしっかりと持つことです。

岩崎:
FCと直営で必要な材料が違うんですね。

嵐:
そうです。生活者からするとあまり変わりがないように思えますが、経営的にみるとまったくといっていいほど異なります。先ほども述べた通りFCは商品です。商品の価値観で勝負をします。商品として標準化することで、経営の”引き算”の部分で強みが出せて、利益を創出できます。一方直営店は「商い」をします。自分たちを磨くのです。自分たちの商いが市場に支持されるのか、存在価値を創ることができるのか、を考えます。”足し算”の部分に将来的に大きく影響を与える考え方です。

岩崎:
それでは、多店舗経営における「課題」とは何でしょうか?

嵐:
先ほどの必要なスキルのところでもお話ししましたが、経営観は非常に重要です。販促ひとつとっても、販促の基本は戦略から出てきた戦術でなくてはならず、効果には裏腹があり、機能しないこともあります。自分ブランドの認識力が高ければ、戦略もしっかりでき、戦術の選択も販促自体も効果が上がりますが、多店舗におけるそこでの存在価値を見逃すと(認識力の欠如)個店戦術が抜け、全体の疲弊を招く恐れもあります。  そしてもうひとつが、ブランド価値そのものです。日本人は「深み」が好きな民族です。目に見えない「価値」を大切にしてきた民族性は、商品、サービスを選ぶ際に大きく影響を与えます。これはただ生活者としてブランドを選択する、という形以外に「働く」という選択においても重要になってきます。FC展開の課題はここにあります。徹底した標準化、マニュアル対応がもたらす働き口としてのブランド価値低下のリスク。「この店の雰囲気がいい」「ここで働きたい」「働いている人に憧れる」と思われるような魅力の創造が出来るのかどうか、現実的に見ても「収入増が見込める」「将来性がある(独立も含め)」など、FCの中での仕事の魅力をどのように伝播させるのか、が重要です。

岩崎:
「ここで働きたい」と思えるブランド価値、という点は、現代企業における「人材不足」「働き方改革」につながる部分が多くあるように思いますね。FC展開における課題の解決方法は何かありますか?

嵐:
やはりエリアマーケティングが非常に重要です。その地域における「選択価値観」を見極め、その特性に適した商品・サービスをいかにして提供できるのか、言いすぎかもしれませんが、その地域をどれだけ愛しているのか、が生活者に伝わるぐらいのマーケティングをすることが出来れば、成功する可能性が高くなります。ただこれはFC展開においてはかなり難しい取り組みだとは思います。そのエリアの文化の反映、課題の抽出を適切に出来る力がないと、無駄な作業と成功しない企画倒れになることが多くなるでしょう。それでもそこに取り組まない限りはFC展開の限界、将来的な疲弊は避けられないと思います。  誤解のないようにしていただきたいのは、FC展開自体は物流の合理性や工場の生産性(店舗・商品増による生産ロットの拡大、原価削減、工場稼働率向上)などにおいて非常に有効なビジネスモデルであるということです。その上で市場における価値を将来に備えてどれだけ向上させられるか、といった課題に取り組む必要があります。また、多店舗経営に大切なのは集客と効率・利益と生活者からのブランドポジションへの影響をバランス感覚で判断していくことが重要です。

岩崎:
FC展開の進化が必要である、ということですね。本日は貴重なお話ありがとうございました。

嵐:
ありがとうございました。

 

嵐 栄喜(秀幸:あらしひでゆき) 略歴
工業大学にて自動車設計を学び、卒業後マーケティングに注目しランチェスター戦略・ビジネスデザインに深く取り組み、広告代理店でブランディングマーケをベースに今まで飲食サービス業ではANAホテルズ、オーイズミフーズ、テンアライド等、メーカー流通ではP&G、キッコーマン、コカ・コーラ、日東ベスト等と取組み、市場開発活性及び事業戦略をサポートし、2010年に㈱A-proを設立。事業コンサルをベースに、事業設計・戦略構築・販促展開・商品流通・店舗設計内装・M&A事業支援など幅広く活動中。

株式会社A-proサイトはこちら→ http://a-pro.cc/

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